霧の中に何がいるのかとか、その造形云々というのは、キング原作の映画には大して意味を持たないんですね。要は、人間の不安や恐怖の象徴としての存在という無形の一点に凝縮されているということ。意識の産物と考えてもイイ。ただ、映画化される度にある種の失望と批判を生んでしまう部分ではあります。原作を読んだヒトの頭の中に思い描く怪物の姿というのは千差万別。映画化される時のヒトツのリスクでもあり同時に作り手の挑戦でもあるわけです。・・・が、結局観終わってみるとそんなもの大して重要でないコトに気付く。『IT』にしても『ドリーム・キャッチャー』にしても紙一重というか、ドン引きして終わるのか、ナルホドと楽しんで終わるのか・・・観客の取り方次第というトコロです。予告編で想像した通りのヘンテコなモンスタームービーか?と思いきや、いやいや・・・そうでもなかったりする。『ミスト』もまた然り。根底にあるのは少年期に感じるような寂しさや恐怖だったり・・・。
・・・で、この『ミスト』。監督のフランク・ダラボンは、懐かしいパニック映画のノリを利用しつつ、霧の中の得たいの知れない存在を"映画として楽しく"提示してると思いますね。そして登場人物、それもストーリーテラー的主役とも言える男をキチンと最後まで描ききっているトコロがイイ。単なるヒーローモノにしていないトコロがイイ。良き夫であり、良き父親。そして極普通の人間であるということ。"本当に怖いのは、極限の状況下での人間である"といった、今までの恐怖映画やパニック映画ではベタなセオリーが、この映画の中でどういう意味を持ってくるか。どういう展開を導くのか・・・。ここは意見の分かれドコロだと思いますが、かなり意図的に作られているトコロが新鮮だったな・・・と。平和に暮らす人々が、ある日突然巨大な恐怖に直面するという部分では共通しているスピルバーグの『宇宙戦争』とは、かなり対照的である点もオモシロイ。
短編の映画化でありながら、たっぷり二時間。それでも退屈しませんデシタネ。理解不能な事態に直面して感じる無力感や絶望感、そしてどうしようもない不条理さ。そして様々な人間が閉じ込められた密室劇の心理的な要素をキチンと描いているおかげだとは思います。そして人々に迫るのが夜の闇ではなく白く立ちこめた霧という、時間や明るさの制約をあまり感じさせない背景というトコロがイイんです。明るくなって事態が把握出来るのではなく、霧が晴れて初めて真相を目の当たりにするという展開のさせかたが、映像的にもそれだけでドラマチックなわけです。
狂信的に信心深い女性、エゴの塊のような男、絶対に救ってあげたくなる女性、子供、家族、老人等々・・・スーパーマーケットという密室の中で彼らは何に直面し、何を選択し、何処に辿り着くのか・・・。高を括って観ている観客に突きつけている意外なほどに深遠なテーマを考えると、このB級テイストの映画は最近ではかなりの拾いモノだと思います。まぁ、こうして少々ホメ過ぎなのは、個人的にこの手の映画が大好きなせいデスけどね(笑)。
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